日本の家庭料理に欠かせないごぼう。香ばしい香りやシャキシャキした歯ごたえがなんとも魅力的ですよね。今回はそんなごぼうの〈意外な事実〉についてご紹介したいと思います。
ごぼうの原産地は海外!?
ごぼうというと和食に使われるイメージが強いですが、実は原産地は日本ではなくユーラシア大陸なんです。ごぼうが日本に伝来したのは、縄文時代から平安時代の間、中国からだといわれています。
さらに、当初は現代のように美味しい料理の材料として使われることはなかったといいます。ごぼうに関する記録のある国内最古の書物『和名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう)』(平安時代中期)によると、主に〈薬〉として用いられていたとか。
日本人が古くからごぼうに親しんできたことには違いないですが、昔は現代とはまったく違った用途に使われていたのです。
ちなみに現在においても、ごぼうの活用法は民間伝承として、日本各地に数多く残っています。全国的に知られる「整腸」「便秘解消」ほかにも、奈良県や滋賀県では「母乳の出がよくなる」として産後の滋養食に、福井県においては「腎臓病」「急性腎炎」「盲腸炎」など実に様々な目的で用いられています。
食用とされ始めたのは割と最近
では、いつ頃から現代のように食用とされ始めたのでしょうか。それは〈たった〉数百年前の江戸時代に食用として品種改良されてからだといわれています。長い日本の歴史で見れば割と最近のことなんですね。
寛永20年(1643年)に刊行された『料理物語』という書物には、ごぼうを使った最古のレシピが記されています。
誰がなぜそれまで薬として用いられてきたごぼうを食材として利用しようとしたのかは定かではありませんが、香りや触感に日本人の感性に訴えかけるものでもあったのでしょうか? 現代人としては、こんなにも美味しくヘルシーな食材を発見してくれたことに感謝しかありません!
食文化の違いがもたらした悲劇
そんなわけで、ごぼうが食用となったのは日本独自の文化なのです。それゆえに、文化の違いがもたらす悲しい事件も起こりました。太平洋戦争時、捕虜の外国人にごぼうを使った料理を提供したことが、木の根を食べさせられたとして「虐待」と捉えられてしまったのです。
和食が世界中に浸透し始めている現在ではそういったことはないでしょうが、それだけ日本の文化には独自性があるということなのかもしれません。
ごぼうにはいろんな調理法があるので、現代ではきっと誰にでも魅力的に感じてもらえるはずです。世界中の人にごぼうを好きになってほしいですね。
〈美味しいごぼう〉は日本の文化
歴史について知ることでごぼうのイメージは変わりましたか? 日本は原産地でもないのに、ごぼうの食文化が独自に発達していったのはおもしろいですよね。読者のみなさんのごぼうへの関心が高まれば嬉しいです。
ごぼう天国では、ごぼうを使った美味しいレシピも随時掲載していきます。ごぼうが好きな人はもっと美味しい食べ方を、苦手な人は「これなら食べられる」というものをきっと見つけられると思います。